あいだ/山本 聖
夜中の3時
ふと目覚めたあなたが言葉にならぬ言葉を私に向かって発する
私もまた
不完全な声の断片をあなたに還す
同意を求めるかのようなあなたの「ねえ」の
「N」と「E」のあいだにかろうじて耳をくすぐる何らかの子音
拒絶するかのようなわたしの「もう」の
「M」と「O」のあいだに同意を含んだおかしげな母音
交わそうと思って交わす言葉に意味らしいものなどない
だからといって
意味でない何かなんてものもない
競るようにいつのまにか近寄りあって
やがて互いの表面を触れ合わせる唇と唇のあいだには
静かな息の交感と
音もない超新星爆発がくりかえされる
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