昔々、日々は、/新谷みふゆ
昔々、日々は葡萄狩りだった
形よく大きなものを探し廻るのに懸命だった
憂鬱は出来事などでなく世界そのもので
頬を切る風は冷たいけれどやさしかった
横から奪っていく手のことなど ぼくはちっとも知らずに
日々は巡り 日々は砂浜で波を眺める生活に変わっていく
雨も光もかもめも・・・
みな同じ水平線上にありながらどうしようもなくばらばらで
飛び交う姿の個体ひとつひとつから放出される熱が
時々少しだけ素敵なものに見える
泣き虫な女の子 少し話をしよう
日々は決して葡萄狩りをして過ごすようなものじゃあない
形よく大きなものを手に入れるために
時間を無駄に過ごすのが日々じゃあな
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