silent moon/いとう
 
くなく話すのは
彼女が乗り越えている証拠なのか
あるいは壁を築いている証拠なのか
こんな会話で真実がわかるわけがないのだけれど

「ごめんごめん。でも踊り上手いよね」
「ありがと。踊るの好きなの。あなたは踊らなかったけど?」
「今日はね。見とれてたからね」
(ここで彼女の絶妙な笑顔。完全に見透かされてます)
「ふふ」(これは手帳には書いてない)
「ふふ」
「髪長いよね。しかも金髪」
(僕はそのころ金髪だった。髪は今でも腰ぐらいある)
「3年くらい切ってないよ」
「へぇ。すごく目立つ」
「うん。すぐに覚えてもらえるから便利だよ」
「ははは。便利。確かに便利。サングラス
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