品詞の活用法/吉田ぐんじょう
品詞の群れが
淡青く固まって
規則正しく
埋まっている
あの砂浜の
崩れたお城のあたりに
それらは風化し
擦り切れて
最早
意味など成さないのに
皆が使いたがるのは
如何してなのか
錆びたシャベルで
深く掘ると
すきです
が出土した
すきです
は香水の匂いがした
誰かが遣って棄てたのだろうか
小さい歯型と
くちべにが付着していた
すきです
すきです
すきです
三回呟いても
合言葉じゃないから
何も起きない
ぱちっと割ってまた埋めた
すきです
は
すきでした
に変わって
ゆっくりゆっくり見えなくなった
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