夜とゆくえ/木立 悟
枯れ葉に眠る蛾
湯の底の丸薬
動かぬまま 呑みほされようとし
はばたき
のがれる
長い光の筒のさき
ずっとひとりを狙いすます
遠くにじむ銃と引き金
灯と灯のふるえ
はざまの熱
鏡の顔に振り返り
葉に沈む眼の痕を追う
網目の向こうに回る光
去る雨の白
四つ足の下
手の水と曇は近くなる
道をはさみ
草の穂と重い光は招きあう
道をゆく羽のふところには
真昼の霜が抱かれている
川の水が動いている
まだらな闇が流れている
今日もまた数億の声を失う
常に降るものを踏みしめること
どこへともなく歩きゆくこと
自ら鳴るものを途中に残して
道はまだつづいていた
振り向けば音の街が建ちならび
ひとつの樹のようにさざめいて
背を照らすうたを降らせていた
はばたきを追う痛みは遠くから来て
からだを貫き 消えてゆく
骨に響く光の残骸
わたる羽から昇る声
応えつづけ またたきつづける
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