【 羊水 】/
豊嶋祐匠
白が白じゃなくなる。
黒が黒じゃなくなる。
好きなものが妙に疑わしくなる。
嫌いなものが少しだけ綺麗に見える。
純粋が無意味に思える。
優しさが嘘っぽく聞こえる。
君が生きて来たこの20年とは
きっと
母の胎盤に包まれた世界と
さほど変わらなかったかも知れない。
羊水で満たしていた心は
不安な空洞を見せ始める。
手触りが変わり色が変わる。
匂いも音も。
[
次のページ
]
戻る
編
削
Point
(0)