異様に明るい/カンチェルスキス
 






 洗剤の泡が
 細胞みたいにまだ
 残っている
 流しの排水口に垂れ下がり
 命乞いの甲斐なく
 数秒後
 消えてゆく
 ネスカフェの紙のふたを
 うまく破ることができない
 スプーンを一つ落とした
 ステンレスの音が
 こめかみの辺りで
 軋んでいる
 




 乾いた線路の砂利の上で
 尻の穴に爆竹を詰め込まれ
 一匹のカエルが
 爆発した
 そのつづく線路の先で
 グレイのジャケット
 ノータイの男が
 急行列車に身を投げた
 男が最後に
 思い浮かべたのは
 フライパンをめぐる
 目玉焼きの
 黄身と白身
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