デンリュウ/ゆりこ
帰りのバスに揺られている
一泊二日は早かった
対向車が十秒に一度 町の景色を遮る
後ろへ後ろへ流れ去ってゆく
卒業旅行はあと三時間で終わる
みんなの記憶装置の中で
まとめの作業が開始された
懐かしくなるのはいつのことだろう
送電塔はでんと構えている
過ぎゆくこの町にも
電気はずっと流れ続ける
静かなところに見えたけれど
引っ越し業者の看板が
ここにも人の流れがあるのだと言った
みんなの睡魔を乗せ
静かにバスはこの町を出る
電流の網をくぐり抜け
また
別の電流をくぐる
町と記憶装置の中で 熱いものが流れている
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