美酒八景/石瀬琳々
 
熟されてワインのように薫る日々
    ひとひ一日(ひとひ)を飲みほす人生
 

男泣き今にこの恋忘れるさ
    五臓六腑にいも焼酎よ


紫煙はき椅子に毒づくたったひとり
    テキーラに沈む夕陽の赤さ


ウイスキー氷は溶けてゆれる灯(ひ)が
    君つれて来る思いつれて来る


手のひらで転がす夢よブランデーの
    海におぼれてこのまま時を


雪恋しウォトカ呷(あお)れば火のように
    もえる心に冬山こいし


禁断の恋に堕ちゆく苦みして
    アブサントその緑いろの罪


黄金に稲穂ささやく夢をみた
    醸(かも)すうま酒白い夜明けに
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