痕跡/擦り傷/加藤小判
世界は僕たちのなかを
通り過ぎて行った
まるで
ただ通り過ぎてゆくことだけが
世界であるかのように
あらゆるものが
あらゆるものに
置き換えられていった
なのに
「いつまでも変らないあなた」や
「死ぬまで君を愛するわたし」は
誤変換を繰り返しながら
少しずつ
聞いたこともないなにかになってゆく
僕たちは
一体誰であることが出来るというのだろうか
切断された世界のなかから
ひとりもいないあなたに話かけている
言葉は意味から捲れあがって
今にも飛んでいってしまいそうだ
そうだ
忘れていたことがあった
太陽ガ
小学校二年生デ
マダ
僕ダッタコロニ
沈ンダコトニ
ツイテ
だから
僕たちはこれから
恍惚として植物になってゆく
しかないのだ
戻る 編 削 Point(0)