狼と蠍/shu
 
かと
狼はなんだか急に萎れてしまって
そのまま屋上に登っていったのです

そうしてお月様の光を浴びて
狼はウサギの着ぐるみを脱いで
月が凍るような悲しい声で吼えると
そのまま次第に石のように固まって
息絶えたのでした

さそりは小窓から
はあはあ胸を掻き乱し
歓喜の瞳を潤ませて
その様子を見ておりました

さそりは
狼が死んだことに
気がつかないのでした
狼の目が黒曜石のように
濡れて光っておりました





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