十月、旅人はあるく/がらんどう
十月 旅人はあるく 十月の道を
森の中 暗がりに残る九月の音に
震える足を抱えながら 旅人は歩く
凍える月は蛇の背に 虫が奏でるのは独房の歌
背を打つ風は亡者の息吹 流すべき血もすでに枯れて
捨てた家は燠火となり 赤い騎士は通り過ぎた
冬を知る指先は赤く 刈られた穂は風に揺れない
十月 旅人はかえらない 九月への旅を
あつらえられた暗い道を 人の世の旅路の果てへと
名も知らぬ旅人の 名を尋ねる名も無き声を
老いた犬が路上で歌う 柘榴を口にくわえながら
青白い騎士よ お前だけは正直なのだな
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