浄夜??遊戯する断片 デッサン/前田ふむふむ
 


  わたしの水底を流れる―――、
美しい喪服を着た海が、耽美なみずの音を砕いて、
新しい海の声に、席を譲りつづける。
塩辛い時の水位に、さめた頬をゆだねる街が、
ひかりの雨を享けて――、
あなたは、青い水流の芯をゆく。
波は淡く、ひかりは赤く燃える写実にもえて。

敷島の萌える声。
聴こえる驟雨のいとなみ。
落日にあなたの消息を、書きしるす繊細な風土へ。

わたしは、茫漠とした夢を抱えて、
          流れるあなたの胸を追う。

静かに、枯れてゆく浜辺は、海を大空に沈めて、
痩せたしがらみを埋めつくして。

あなたは、燃えつきた挽歌を掌に包んで、
浄められた夜をゆく。


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