弔い/海月
 


おかあさん
おかあさん

その名を呼んでも返事をするのはおばあちゃん
偽善の優しさを知ったら余計に悲しくなった

ねぇ、どうしてぼくにおかあさんはいないの?
ねぇ、あの日におばあちゃんがついた事は嘘だったの?

何も云えずに震える肩を見た時に僕は自分の部屋に走った
僕は大切にしているものを傷付けた
それは借り物の漫画を汚す
それはプラモデルが壊れる
そんなことよりも大きな衝撃が胸中で芽生えた

最低限の会話を繰り返して年月は流れた
僕は「ごめん」の言葉も云えずに大人になっていた

今日、貴方の命日に告げる
ごめんな・・・
それでも何も変わらずに明日はやって来る


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