恋人/キメラ
淡い彗星到来
さわりぞら
沖網に掛かる
幾千の廃絶が決心を垂らす
鉱石の連鎖
明滅の香澄
二重のIラインが
悲しく咽び濡れ
散ったのはいつだ
散るのはいまだ
微かな声を
手探りでさがし出す
午後は纏まらず
幾ばくかの敗北と
薄紫のレインコートから
水滴だけが在為を知らせた
遠い汽笛と吸い込むべき気圏には
いつも
清々しい想いでが空を創る
君よ
白いセスナの羽を翔け
より栄える真紅の吐息と
蜘蛛の巣から
細くたなびくひかりの糸に
油性の湿りけを
与えつづけよ
ああ
人里離れ
寂しげを
私の永い黒煙に纏い
岩戸や閉鎖の怖い風刃にも
泣くなよ恋人
岸壁の庵
儚いしゃぼんと白熱灯
黙殺された純真に砕けたのは
確かに四月とわたしで
ゆらいだ紅を水面に溶かす世界が
暗寂をはねつけ
君の香りがひろがる
嘘なんてなかった
この世界で生きたい
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