めざましとけい/吉田ぐんじょう
 
目覚まし時計の電池を抜いて
針を止めてはみたものの
時間が止まるわけでは無くて
時間が戻るわけでも無くて
ぴかぴか光る文字盤を見ている
わたしはきっと
何かを後悔してるのかもしれない

送信釦を押すと
一分後には着信する
そういう世の中の仕組みや
自動的に修復されるエラーや
電柱に貼られた性欲等
そういう単純なものに
憧れているのかも知れない

柱時計が十二時を打った
明日は早起きをしなければならないのだった
わたしは
電池を元通り入れて
こくこく動く秒針を見ながら

時間を少しだけ早めに
合わせてはみたものの
早く死ねるわけではなくて
長く生きられるわけでもなくて
解らなきゃいけない年齢だと思った
もう
そろそろ

やっぱり
絶対に



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