おタマヶ池/千月 話子
 
に左に向いているので
彼の秋祭りは もう始まっているようだ


柔らかい陽に照らされて 気持ち良い猫の
白いお腹の縞の島から お魚が飛び跳ねて
それは小さな おタマヶ池
 お前 いつも秋になると教えるのね
 私が昔 猫だった頃のこと
 ・・・・・・・・・・・・


水仙の花咲く池のほとりで待ち合わせした
白い綺麗な猫を ナルシスと呼んでいた
私は小さな蝶々を追って
向こう岸で 飛び跳ねて飛び跳ねて
ザブン と池に落ちたのを彼は
緑色のビー玉のような瞳で見ていたのだろうか


沈む私の手の平は
慌てるでもなく
サヨナラ と揺れていた


 にゃんにゃ
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