妻の話/吉田ぐんじょう
 
たところで
山場だった
早く読み進めたかったので
折り返し電話することにして切った

枕に顔を埋めると
妻が柔軟剤を変えたようで
ふかふかと花の匂いがした
恋人にはそれきり電話しなかった

夕飯は厚揚げだった



妻がわたしを呼んでいる
行ってやらなければならないので
このお話はここまでにしよう

妻はとても小さいので
棚の上のものを取るのに
いちいちわたしを呼ぶのだ

顔について書くのを忘れたが
特に重要ではないだろう

妻は今日
花柄の浴衣を着ている
一緒に花火大会に行くのだ

あなたは脊が高いから
男ものを着てください

等と言っていたが

そうだ
りんご飴を買ってやろうかな

呼び声が一段と高くなる

わかったよ

今行くから



2006.8.27

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