妻の話/吉田ぐんじょう
 

とか
色々言ったのだが

いいえ
わたくしはあなたの妻です

の一点張りで
埒があかぬので諦めた

好きにしろ

と言い捨てたら
妻は嬉しそうな顔をして

はい

と靴を脱いだ

ぴかぴかとよく光る
きれいな靴だった



妻とわたしは毎晩おなじ布団で眠る
望んでそうしているわけでは無い
布団が一組しかないからだ
毎晩
妻は洗いものを済ませてから
するりと横にすべりこんでくる
黙っていると変なことになりそうだから
妻が眠るまでは
お話をしてやる
わらしべ長者とか
ジャックとまめのきとか

一度
宮沢賢治の『猫の事務所』を読
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