雁  火口湖  山肌  他 ・・・/杉菜 晃
 




◇昼寝   


うたたねの男は   

終始

怒号の鳥と諍(いさか)つてゐる



◇柵の外


栗林は

豊穣を抱へ込めずに

柵の外に

栗の実を

弾き飛ばしてゐる



◇樹


吾が夏野には

常に

オアシスのごとく

すつくと一樹が立つてゐる



◇秋暮れて


ぼろ傘のやうに

ささくれた鴉が

飛んでゐる


ああ ああ

と嘆息しながら



◇石榴   


日を蓄へ   

見目形のかなたに   

充実してゐる       
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