奇跡のやうに/
杉菜 晃
尾羽を風に吹かれて
鶴はどこまで歩いて行くのだらう
追ひ風に逆毛になつてゐるだけ
見栄えのいいものではない
貴婦人がふくらむスカートの裾を
気にする風情で
遠ざかつていく鶴よ
枯野の果ては深潭で
木枯らしが吹いてゐるばかり
そこでどんな目覚めがあるといふのか
いや 淵にのぞんでこそ
救ひの気流も巡つてきて
一気に舞ひ上がれるのかもしれない
奇跡のやうに
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