びょ、ーき/吉田ぐんじょう
・
曖昧に舌を含んで
ただ笑った
あなたの考えている事は解らないと
言われたから
悲しむだけの隙間も無くして
ただ笑った
薬は二週間分出たから良かった
・
フォークを持つと
人が止めるから
ハンバーグは匙で食べる
悪戯にソースばかりが
前掛けを汚して
今日もあまり食べられなかった
・
夜中に起きると
隣の部屋から
色々な相談が聞こえてくる
切なくてくしゃみをしたら
声が止んだ
でも
また始まるって知ってた
・
遣る事が無いので
丹念に鉛筆を削ったら
翌朝すべて捨てられていた
遣る瀬無くて爪を噛んだら
血が出たから
日記はひとさし指で書いた
・
病気
という言葉は陰気で
びょ、という音で
色々汚いものが表現されている気がする
ーき、という音で
汚いものは汚いまま
放り出されるような感じがする
だからわたしのことは
もっと綺麗に形容してくれたら良いのに
エルフとか魔法使いとか小人とか
と考えているうちに
どうも日が暮れたようだった
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