僕は僕が分からない/YASU
「君は君らしく」とか
「あなたはあなたのままに」とか
流行の唄や
雑誌の表紙に
文字は躍っているけど
僕は僕が分からない
さまざまな本の背表紙をつまんで
ぱらぱらと揺すってみるけど
ページの隙間から「僕らしさ」は落ちてこない
さまざまなCDの電子記憶の輝き面を見つめて
ギリギリとわざと傷など付けてみるけど
ひずんだデジタルの溝に「僕らしさ」は潜んでいない
さまざまな女の子宮をペニスでかき混ぜて
くんくんと犬のように這いづり回るけれど
テレビの明かりの反射する女の体のどこにも「僕らしさ」は見つからない
このままじゃいかんだろう!
などという苛立ちの中
鏡とにらめっこして白髪を一本一本抜くという 夕間暮れ
「コーヒーでも飲みな」とカップを差し出すという 君の気まぐれ
僕の知らない僕らしさを一番知っているのは
おそらく君で
何もかもを見抜いているような
コーヒーの湯気が揺れている
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