逃げ水/
狸亭
ビル群の果て
血の色をふくらませながらのアンダンテ
異国の都市の 闇の中に身を横たえ
熟睡できぬ丑三つ刻に危絵(あぶなえ)
少年の頃のマドンナ 夏目久子
奇々怪々の 新鮮な 大和撫子
五十年間秘められてきた 初恋
何故か君だけが訪れる夢枕 面白い
紙細工の鳥がエアコンの風に揺れ
カサカサと虫時雨 足裏の罅割れ
さびしさここにきわまり 寝床を起きだす
仕事も 夢も 平和も 恋もが逃げだす。
19990429
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