大トランポリン駅にて/角田寿星
 
高さもリズムも まるで違うから
いつもいつも擦れちがってしまって ほんとはね
あたしも あなたといっしょに行きたいんだけど
列車に乗ったら死刑だから 死刑になっちゃうから
しかたないじゃない さよなら
あたしはあきらめたように少しだけ泣いて にっこり笑って
別れのキスも出来ないで

あたしは ぽんぽん うまく弾めるようになって
彼氏は突起を下に伸ばして ぽーんと飛び上がったかと思うと
不定型になって窓の隙間から にゅるにゅる
列車に爽やかに乗り込んで
発車のベルが鳴って
でもあたしは それを見ていなかった
あたしもいつの間にか完全な球形になって
一つの眼球になって
ゆっくりとあたしにあたしの瞼が覆い被さった
瞼の内が熱いのは 高熱のせいだろうか
あたしの 眼を閉じたその瞼をあなたは
いつまでも覚えていて
ください

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