大トランポリン駅にて/角田寿星
 

3か月前にあたしをふった
彼氏が旅に出るってんで
40度の熱があって あたしはたたき起こされて
着のみ 着のまま
葛西シルチスのアマゾン鳥が鳴く金町方面
あたしひとり 駅まで彼氏を見送りに

プラットホームには この駅始発の列車が もう待機していて
そのむこうには彼氏が 始めてのデートの時のように
大きく手を振って 笑顔であたしを呼んでいた

ただ あの頃と違っていたのは
駅の構内が全部トランポリンで
あたしも彼氏もぽんぽん弾んで
彼氏なんか完全な球体で 器用にぽんぽん ぽんぽん
あたしはぽんぽん揺られて高熱でうんうんうなされて
彼氏に急いで近付きたくても入場券
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