さんぶん/秋/atsuchan69
び押し寄せる。それは幾度も繰りかえされて諸々の行き先へたどり着くまで間断なく続く。しかし彼らは乗客であり、苦痛や不快は訴えるべき権利を有している筈だというのに何もしない。「ああ、悲しいかな/躾けられた家畜の性。
暴力団とかヤクザだとか、どんな呼ばれ方をしても構わない。しかし殺しのあとは身も心もズタズタに疲れて、俺だっていくらなんでも人のつもりだし、あの高台に建てた家へ帰ってバラの花弁を浮かべたジャグジーにゆっくり浸かり、久保田の千寿でもいい、せめて一杯飲みたい。俺は深夜、寝ずの仕事をし、何故かこんな時間に帰ってきた、殺人者だ。
迎えの車がすこし遅れてやって来た。そして俺はベンツの後部座席にふん反りかえって葉巻を吸う。
「今朝はすこし肌寒い、もうすっかりと秋なんだな」
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