青い声が聴こえる日 デッサン/前田ふむふむ
 
一、 某月某日 冬

凍る雨を浴びつづけて、一年を跨ぎ、
わたしの頬は、青ざめて、
虚ろな病棟の、白い壁に残る、
黄ばんだ古いシミに親しむ。
難い過去を追走する暗路を、
エタノールの流れる雫で、溶かして、
わたしは、幾たびも、乾いた水底に沈んだ。

青白い癒しを、あてがわれた錠剤が、
怠惰する喉を熱くする。

耳の奥から、傲岸の冬の序奏が響き、
黒い地平線がみえる午後。――

砂丘を抱く眼がしらに、みずの囁きを聴こうと、
もがきの丈を伸ばして。
眼差しは、遠く茫漠として、
いつまでも霞のなかにある。


深々と降る雪が佇み、夢の裂け目を、曖昧にくぎる水平
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