白いシャツの切れ端/カンチェルスキス
 







 いつの日も 青空は明るい
 紅茶に溶けた 角砂糖
 スプーンの渦が 止まる
 こんなに悲しいのは なぜだろう




 テーブルの光に カレンダーを描く
 並べた数字に どの曜日も噛み合わないのは
 静止画の世界に埋もれていたから
 ここに居ることの重さが
 秘密を暴かれるように 漏れはじめていく




 店の扉が開き 誰かが出て行った
 開いた扉の下から なまぬるい液体が
 階段をつたって 舗道の溝まで 
 続いていた




 ふくらんではじけ飛ぶ夢想のまま
 身体の一部は 呼吸で満たされ
 やはり 漏れていく
 石を投げても 波紋のできない水面を 
 これから 歩いていくことになる




 いつの夜も 日の光は及ばない
 天井の照明を 映したカップの底
 いつでも立ち上がるのは 難しい
 カットした 白いシャツの切れ端を
 テーブルに残し 店を出た







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