歌/木立 悟
 

冷たい水の熱さに触れ
公園に立つ冬を見る
檻のなかの時計と噴水
公園に歌う冬を見る



風は痛く
水は閉じる
風はたくさんのものを集めている
誰もいない道を
ひとつめぐり
ふたつめぐる間に
冬は別の歌を歌っている



雨の近づいてくる音が
止まった川を震わせてゆく
高い雲と低い雲
重なり離れるまだらの影が
ひとりの道を過ぎてゆく



鏡を残して雪は消え去る
空はあらゆる高さを歩む
雨は木々だけを湿らせて
午後の街へと退いてゆく
冬は鏡のうしろに立ち
景を持ち去る風を見る
雲につながるはばたきを見る



新たに翼を継ぐものが
遠いはざまに結ばれてゆく
はばたきの他に風はなく
はばたきの他に色はない
解かれた時計も噴水も
午後の光のように動けずに
響きつづけ在りつづける
冬の歌を聴いている


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