空が落ちるまで/なまねこ
 
空が落ちるまえに
芝生に背をあずけて
歌いながら
指先から順に
空に飛ばす
歌声に支えられた指先は
映るもののない
落ちくぼんだ河面をかすめ
駆け上がり
低く重い
地面に向けてうなる空を
押し上げながら
まばゆい新月の裏側に
押し込まれる
ように
溶け込んでいく
重い雲の群れのうなりが
歌声に混じり
陽の光を探しながら
それはやはり
空の裏側へ
広がり
遠ざかり
狭まった世界から逃げるように
溶け込んでいく
歌声は空へ流れ
流れに運ばれて
逆さになった世界のなかで
体は浮き上がり
舞い上がるように
押し上げられる空
とともに
立つべき
[次のページ]
戻る   Point(0)