m/草野大悟
目の前に
サムホールの油絵二点
右手が自由に動く時に
君が描いたものだ。
ひとつは
テーブルの上の4本の瓶
もうひとつは
テーブルの上の4個の洋梨
どちらも
ペインテイングナイフを使って
ある部分は大胆に
べつの部分は繊細に
描き込んである。
4という数は
ぼくら4人家族をイメージさせ
テーブルは
毎日の食卓を彩っていた
君のホームグランドだ。
サンドマチエールを使って
ざらりと仕上げたバックと
滑らかなテーブル内のコントラストに
泥沼のような世間から
家族を守り抜こうとしていた
君の矜持が見える。
そのタッチの
ひとつひとつが
愛おしい
ひとつひとつが
哀しい。
m
かじかんだ右手のm
m
折れ曲がった左手のm
また、油絵を描こうな
ふたりで描こうな
きっと
きっと
描こうな。
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