王国の雲、地平線の欠片/緑茶塵
 
手を繋いだらと
俺は思う

あんな年老いた老女を、と

何もかも枯れた土地で、ほそくたたずむ
逃げようと思った事はない
この地平の何処かに、まだ残されているものがあるのならと

いつの頃からか

悲しみにくれる時がある
それは自分で自分が悲しくない時だ

もう昔に捨てたはずなのに、私の心はそれから逃れられないでいる

その悲しみは
紅(べに)の色をしていて

その紅は
一筋の光りのような冷たい青に、その芯を貫かれている

流れる雲の彼方に、もう日が沈んでしまう黄金色の空があったとして
誰がそれを追いかけるのだろう

私しか居ないと思った

彼女の心は誰よりも綺麗だと思う
それが伝わらないのならいっそのこと

繋いでいる手と手にすら、心が通わない

そんなふうに考えてしまう

雲の王国 地平線の欠片

ここからだと、地上に残された悲しみがよく見えるような気がした
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