満月の底/atsuchan69
 
しんしんと眠る森
十五夜の月を映した湖
さらに枯野をすぎて

大地の裂け目から
地の底から
やさしく吹かれた
しゃぼん玉のように
夥しいほどの色づいた想いが
きっと魔法みたいに重力の枷をきって
次々と自由きままに浮かび蠢く
ベルガマスクのメロディ

ふたり幽体離脱を果たし
夜と昼のとおい絆を手繰りよせ、
せめて抱擁をしつづける僕たちの 
儚い今を「どうか許してほしい

秋風に弄ばれ、薄(すすき)の揺れる河原に
殺戮の赤い羽の天使たちが舞い降りて集う
密かな宴に歌う、哀しき鈴虫
夢にも満たない小さな羽音は擦れ
夜の湿りに、ほんのひと昔まえが蘇える//

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