時のはしご/下門鮎子
いつもさいしょでさいごに
いまここにいる、
小石の投げこまれた池のように
よどんだ
時。わたし。
そうして飛び出した
時と時とをわたすはしごを
少しも休まずにわたる、
いつも時のはざまにいる
わたしたち。
今日、デジャ・ヴュにおそわれた、
前にもここを通ったことがある。
このはしごの両端は
誰が持っているんだろう。
持ち手の顔を見ようとしてみたけれど
いくらがんばっても叶わなかった、
そこは水のない、広大な
わたし でしかなかった。
誰もいない空間に投げこまれて
在ったわたし
そこでは足がなくなった。
本当にひとりで、
風船のように漂
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