眩 暈 (0~3)/水無瀬 咲耶
0 つるべ井戸は出自を探索する
さやさや と
つたう
銀 の
くさり
脊髄を滑り落ち
深淵から香りたつ
気配を辿ると
響くことのない海が
瑠璃に まどろんでいる
そこは
予感に満ちた
粒子たちの坩堝(るつぼ)
**私は つるべ井戸として
ふいに 遣わされる
汲み上げられた 未分化の
それ を抱きかかえる
ゼリー質の日常
と思考の果皮
丁寧に砕いて
硝子のカレンダーに
張り付けては
目が彼方へと波打ってゆく
問うと、
微笑み遠ざかる 全きもの。
私が切取る世界は
あまりにも小さい
1 樹は甘苦い歳月を咀嚼し地軸を
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