夢想/tibet
猫はどうしているだろうか。
ある晩
ぼうっと星から眺めていると
パラシュートで降っていく猫を見た。
大気の摩擦熱で真っ赤に燃え上がり
シッポをブアっとふくらませて
期待に溢れた目をしながら
呼ばれてもいない世界へと旅立っていった。
私が思わず「気をつけて」と呟くと
猫は私に気付いて「ありがとう」と口を動かした。
「知らない世界に行くんだから、恐ろしいとも思うが、好奇心と喜びで心は一杯です。」とも言った。
私は猫に何かをしてあげたくなったので
目に溜まっていた涙を一つに集めて飛ばしてやった。
しばらくして光の粒は摩擦熱でシュッと散った。
気が付くとそろそろ時計も動き出す時間。
猫のことはもう考えない。
私の同居人がいつものようにキッチンでミロの粉末を温かい牛乳で溶かしているので
彼の足下へと行ってやって
すねに体をこすりつけ
背中をくるぶしに押し付けながら再び丸くなった。
そして「ふにゃあ」と鳴いて目を閉じた。
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