月の夢もしくは花の香り/プル式
 
一・何処までも泳げるだろう

遠くに見える島を目指して泳ぎだした
泳げども辿り着けないその島は
蜃気楼なのだろうか
それでもまだ
辿り着けると信じていた

二・振り返ってはいけない

隣を泳いでいた筈の友人が居ない
遅れたのだろうかそれとも
遅れたのは私だろうか
不安になり振り返ると
大きな夜が口をあけていた

三・潜る

大きな波に飲みこまれて息が出来ない
海の底まで沈むのだろうかと
沈む先を見ようと目を開ける
意識が遠退いた所為だろうか
まるで太陽の様な輝きが見えた

四・漂流した楽園

手を伸ばせば果実がある
何処までも広がる楽園はしかし
夢なのだろうか
その夜に私は
ひっそりと楽園を後にした
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