最終行まで/岡部淳太郎
――すべての夭折を急ぐ者とそれを諦めた者のために
?
たとえば雨が降って
翌日には綺麗にあがって
その間にブレーキを踏んでから止まるまでの
少しこわい距離がかせがれて
僕たちは眠っている間に見た
夢の記憶を忘れてしまう
悪いしらせは
いつも遅れてやってくる
たとえば
この秋が忍び寄る残暑の季節に
初夏の事実が 蝉の屍骸のように
ころり
(と)
転がり落ちてくる
僕たちはいつでも無情だった
他人の苦悩や歴史について
人はいつも
自分から自分への言葉を
待つことしか出来ない
言葉をかけてくれる他人など存在しないから
い
[次のページ]
戻る 編 削 Point(14)