夜想曲/石瀬琳々
 
ノクターンそのたくらみに旅をする
    まなざし揺れる夜の窓際


ささやきに似た腰つきでつぶやきに
    似た足どりでダンスする夜(よ)は


ガラス窓くちづけかわす夜の色
    あいしていると風はくるめく


胸に抱く想いははかな蒼やかに
    咲く日のあればわたしの菫


すみれ匂いありかは知らずひたすらに
    もえる心を恋と名づける


そばだててそっと聞くのは胸の音
    あるいは風のつまさきだちの


さやかさやか葉ずれの音にやさしい嘘
    重ねて過ごす夜の営み


冷たいキス闇の中ほど灯(ひ)をともし
    風の標(しるべ)に行くあてもなく


抱きしめてはなさないでよ夜に迷い
    淋しい瞳ほそい指でも


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