顔 その4/恋月 ぴの
 
仮面


産まれたての
あの頃に
戻りたくて人は被る








他人を欺きとおせても
おのれの顔だけは

欺けない





頭蓋骨


それは追憶のためにある
生きていた頃の
苦悩と歓びの残像を
その姿に宿し
画家のテーブルで時を刻む
ピカソが
セザンヌが
描こうとしていたもの
物体と化した
表情の向う側で語りかける
眼差し
それらの愛おしさを
絵筆の先
感じるままに
生きるがままに

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