夏汗/たもつ
 

母とふたり
ブランコを引きずって歩く
強い陽射しに皮膚は焼かれていく
健康に良いことだ
母は教えてくれた

たくさんの人とすれ違う
みな一様に微笑んでくれる
支柱が肩に食い込んで痛いと言うと
母は困った顔をするけれど
それはいつも
悲しい顔とちがう

公園では親子連れが
ブランコ遊びをしている
その姿は喜びと幸せに満ちている
流れ落ちる汗に溺れそうな僕らも
多分そう見えたことだろう

夏に関していえば
今もそれより他の夏を知らない
ひとり
母の死体を引きずって歩く


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