夢は枯れ野に(1)/ならぢゅん(矮猫亭)
旅について考えてみたい。
芭蕉の力を借りて。つまりは『おくのほそ道』を読み解く。もとよ
り旅らしい旅などしたことのない私に何が解るのか。自ら発した問
いの洪水に溺れてしまうのが関の山か。
だが溺れてみなければ海のことは解らないものだ。
○ ○
月日は百代の過客にして、行きかふ年も又旅人也。
時は過ぎゆくもの。去ってゆくもの。取り残される者の痛みは誰も
が知っているはずのことだが、皆、知らぬ振りを決め込み、平然を
装って暮らしている。今がいつまでも続くかのように思いなして。
しかし。時のように。過ぎゆくこと、去ってゆくことを生きた者
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