昇灰華/木立 悟
色とりどりの人々が
角を曲がっては消えていった
降る雪の一粒一粒が太陽になり
地を貫いてはかがやいていた
空に届かぬものと
地に届かぬものとが手を取り合い
壁を巡りつづけるものの目に光を注いだ
音が吹き寄せていた
歌は凪いでいった
ひとつの声を残して
原は微笑むことをやめてしまった
熱のない太陽のあつまりが
静かに光の板を食んでいた
木々のあいだに木々があり
木々のむこうの木々のむこうに
空は白い岩のように立っていた
誰も吠えない月の夜に
階段を作っては壊す光
夜は晴れて
土の下を照らし
背の文字は消えかけて
守るものはなくなって
電線の影が編む色に
雨が去った後の色にひろがる
ふたつの町の重なりのなかを
誰もいない
誰もいないと歌い飛ぶ鳥
やがてひとりへと還る鳥
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