頬/たもつ
東京行きの列車が
一番線のホームに到着する
あれに乗ればトーキョーまで行けるのね
娘は言った
うん、行けるよ
行きたいな、トーキョー
この間の日曜日みんなで行ったじゃないか
うううん、行ってないよ
大きなデパートで買い物しただろう
だって、あれ、シンジュクだったもん
その口調も表情も
大人をからかってるふうではなかった
この季節に吹き始める涼しい風が
娘や僕の頬をなでて
遠くに去っていくのがわかる
シンジュクだったもん
もう一度娘は言った
今度は幼い僕を
からかっているかのようだった
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