雨よりはやく/朽木 裕
今日の雨は哀しい音で泣くから
傍に居て欲しいと、思うんだよ。
頭をぎゅう、と締め付ける雨の響き方が
やけにゆっくりで
あのイントロに似ている、と思ったりする。
死は矢張り誘惑で
言葉が自家中毒を、起こす。
距離が保てなくて言葉と一緒に死んでしまいそうに、なる。
雨は体外に在るものだけれど
言葉は体内に在るのだろうか。
体内…胎内…。
身体の中から蝕む音が。
身体の外から崩す雨が。
死んでしまうよ、どうしたらいい?こんな夜。
逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい。
雨よりはやく愛しにきて。
出来れば言葉が死ぬよりはやく。
言葉が俺を道連れにするよりはやく。
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