空とふるえ/木立 悟
 



まるいかたち
まるくないかたちのものが
手ではない手にこぼれ落ち
光や
光ではないものとともに
器のなかで鳴りつづけている


低い草  永い風
畏れをわずかに避ける影
晴れを背にした水の冠
ざわめきしかないざわめきが
そのままのうたにつながってゆく


双つが遠く引き離されて
同じ雨に互いを呼ぶとき
虹は縦の瞳のように
滴のはざまにつらなって
どこからも同じ隔たりの
波打つ言葉になってゆく


道を歩む花の群れから
虫はくちびるに乗りうつり
羽を残し 土に消える
羽は羽とともに飛び去り
くちびるは花の終わりに照らされ
道は東の空につながる


まぶたの上の晴れは昇り
生まれた場所へと去ってゆく
そうであるもの そうではないもの
互いを呼びあうものたちの声
ふちのない器をふるわせる


うなずくようなうたのはじまり
紡ぐ指からこぼれ落ちる名
曇駆る言葉の迷いと巡り
空とふるえ 双つの響き
うたからうたへの水の冠
器へ器へ降りそそぐ











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