堕天使達の夜 /服部 剛
 
人々が漏らす溜息(ためいき)で 
街の輪郭が歪(ゆが)む土曜日の夜 

場末の Bar の片隅で 
翼の生えたアダムとイブの人形は壁に凭(もた)れ 
虚ろな瞳で古時計をみつめている 

縫い合わせることのできない 
破れたハートの隙間を 
飲み干す酒で暖めようと 
カウンターで再会した二人

グラスを重ねる音が響くと
古時計の長針と短針は
ゆっくりと逆回転を始める 


午前2時 
人気ないカウンターに取り残された二人は 
店を出て 肩を組み 
千鳥足で揺れる路地裏で
砕けた腰を地べたに落とす 

煉瓦(れんが)造りの家々の上
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