幸福な九月/千月 話子
 
ほの暖かく
私とあなたの好きな川面を揺らし
魚は水へ 鳥は空へ
私は橋を渡って温かな家へ
帰って行きます
 泣いていたのですか?
 あなたの帰る場所は もう


あなたが寂しくも潔くもして
とたん と息の根を止めた時
私はとても幸福でした


晴れた空に虹は架かり
私の目の前で道になっても
ああ、、美しい と思うだけ
 手を振っていたのですか?
 旅立ちを知らなかったので まだ
 ずっと続いていた思い出を慈しむ日々


あなたが遠い日に
しん と息の根を止めた時
私の今日も幸福でした


懐かしい風のふいに吹く午後
聞いていた歌から愛の言葉が
繰り返し 繰り返し 愛しいと

ああ、、勘違いしそうです
歌唄いの声が呪文のようで
ああ、、勘違いしそうです
ジャケット写真に写る異国の人が
似ているようで
 忘れないで と言っているのですか?

今年も甘い花の香りを連れて来て
私は いつでもここに居るから 




 
戻る   Point(18)