ヒトとペットと坂東眞砂子/冒険野郎マクガイヤー
じない動物とは極めて限定的な意思の疎通しか行えない。そこで動物の心情を想像して補うわけだが、動物が本当はどう思っているか、はっきりとは分からない。勢い、自身の意識の幾分かを動物に投影することになりがちである。ペットの目は飼主の心の鏡であるわけだ。そういう動物を自分で殺すってことは、自意識の幾分かが壊れるということだ。確実に頭がおかしくなる。
だが、人間は器用な動物だ。自分に対する様々な言い訳を見事に発明する。例えば、私がクワガタを殺したとしても頭がおかしくならないのは、クワガタを殺す悲しみよりも標本を手に入れられる喜びの方が勝っているからだ。牧場主が飼っている牛や豚を屠殺しても、それは生活
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